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書評 脚本の書き方

三幕構成とは|おすすめ本とハリウッド式メソッドを紹介

三幕構成とは、物語の構成方法のひとつで、物語を「第一幕(設定)」「第二幕(葛藤)」「第三幕(結末)」の三つに分けて展開させることをいいます。

物語の構成といえば、「起承転結」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。起承転結は、日本では馴染み深いものですが、ハリウッド映画界など国際的には三幕構成で考える方がメジャーなようです。

脚本を書く上では知っておいた方が役に立つ構成方法のため、ぜひ把握しておくようにしましょう。

三幕構成とは?

三幕構成とは、物語を「第一幕(Setup:設定)」「第二幕(Confrontation:対立・葛藤)」「第三幕(Resolution:解決)」の3つの展開に分けることです。

三幕構成とは

ストーリーの長さの配分も大体決まっていて、第一幕:第二幕:第三幕=1:2:1が目安となっています。例えば120分の映画の場合は、第一幕が30分、第二幕が60分、第三幕が30分となります。

第一幕は、ストーリーの発端で、状況の設定が説明されます。起承転結の「起」の部分といってもよいでしょう。

「第一幕:Setup設定」で描かれること
・主人公の置かれている状況
・主人公がこれから向かう目標

第二幕は、ストーリーの中盤で、もっとも長いパートです。起承転結の「承」と「転」を含めるものともいえます。

「第二幕:Confrontation対立・葛藤」で描かれること
・主人公は目標に向かって行動していく
・目標に向かう主人公の前に障害が立ちはだかって、主人公は葛藤する

第三幕はストーリーの結末です。問題の解決・結末シーンが描かれます。起承転結のまさに「結」の部分です。

「第三幕:Resolution解決」で描かれること
・主人公は目標を達成する
・主人公は成長し、問題解決後の世界をイメージさせる余韻がある

シド・フィールドの三幕構成

冒頭でも触れましたが、物語の構成について、日本では「起承転結」が最もよく知られていますが、国際的には三幕構成の方がスタンダードといえます。

ちなみに、物語を三つに分けるという構成方法は、古代アリストテレス以来の演劇的作劇法として古くからあります。日本でも「序破急」という舞楽・能楽の構成形式で、物語を3つの展開で考える方法が古くからありました。このため、物語を3つの展開に分けて見せるというのは、実は人々になじみ深い見せ方といえます。

特に脚本の世界では、脚本家のシド・フィールドが体系化した三幕構成の方法が有名です。

ここでは、シド・フィールドの著書「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」(フィルムアート社)に基づいて、三幕構成の内容をもう少し詳しく解説します。

三幕構成で重視されるプロットポイント(転換点)

シド・フィールドの三幕構成では、物語が展開するポイントとして下記のポイントが定義されています。

シド・フィールドの三幕構成

シド・フィールドの三幕構成では、第一幕から第二幕に移る転換点など、話が新たな方向へ変化するきっかけを「プロットポイント」(ターニングポイント)と呼んでいます。

プロットポイントは、ささいな出来事やエピソードだったり、大きな事件だったりと、インパクトやスケールはあまり問いません。プロットポイントは、あくまで次のストーリーに向かう転換点としての機能をいいます。

三幕構成で設定されているプロットポイントの種類には下記のようなものがあります。解説として桃太郎の事例を入れていますがこれはあくまで一例として参考にしてください。

【第一幕】
フック(インサイトインシデント)
ストーリーの掴みとなるもの。
昔話の「桃太郎」でいえば、「川に大きな桃が流れている」といったシーンを指します。
プロットポイントⅠ(ファーストターニングポイント)
プロットポイントⅠは第二幕へ移るきっかけとなる出来事。多くの場合、主人公が、目標に向かって動き出すきっかけを示します。
例えば、昔話の「桃太郎」の場合、桃から桃太郎が誕生し「桃太郎の生活が始まる」といったもの。このプロットポイントⅠから第二幕に入り、桃太郎とおじいさんとおばあさんとの暮らしが始まります。

【第二幕】
ミッドポイント
ミッドポイントはストーリーの前半と後半をつなぐ重要な事件、エピソード。
「桃太郎」の場合は、おじいさんとおばあさんと仲良く暮らしていた桃太郎が、鬼退治に行くことを決意し旅に出る点がミッドポイントです。ここからプロットポイントⅡにかけて、桃太郎は猿やキジ、犬を家来に従えながら鬼ヶ島へと向かいます。
プロットポイントⅡ(セカンドターニングポイント)
プロットポイントⅡは、第三幕のクライマックスへ向かう転換点です。主人公が問題の解決策を見出すポイントです。
「桃太郎」では、桃太郎は鬼ヶ島に到達し、いよいよ鬼と対峙するところになります。

【第三幕】
第三幕では主人公が戦いに勝利しすべての問題が解決します。第三幕にプロットポイントは特にありませんが、主人公は目的を達成し、オープニングから変化した世界のイメージが描かれます。
「桃太郎」では、桃太郎は鬼に勝利し、おじいさんとおばあさんが待つ家に宝を持ち帰るシーンが描かれます。

三幕構成を学ぶためのおすすめ書籍

上では、シド・フィールドの三幕構成について紹介しましたが、三幕構成についてはさまざまなシナリオ教本で解説されています。ここでは三幕構成を学ぶためのおすすめ書籍について紹介します。

「素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2」(シド・フィールド著/フィルムアート社)

三幕構成を学ぶためのおすすめ書籍の第一冊目は「素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2」(シド・フィールド著/フィルムアート社)です。

上のシド・フィールドの三幕構成では、シド・フィールドの映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」(フィルムアート社)の書籍を紹介しました。こちらの書籍は、このシド・フィールドの脚本に関する教本のシリーズ2作目といえます。実際に三幕構成を学ぶときは、2作目にあたるこちらの書籍の方がおすすめです。

2作目の方が全体的に読みやすく作られており、三幕構成についても解説がかなりわかりやすくなっています。また、ワークブック形式のため実践的に学習することができ、構成方法が身に付きやすいといえます。

こちらを読んでから1作目を読んだ方が理解しやすくなるため、シド・フィールドの脚本術を学びたい人にとって学習時間の短縮にもなり、おすすめです。

「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」(ブレイク・スナイダー著/フィルムアート社)

三幕構成を学ぶには「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」(ブレイク・スナイダー著/フィルムアート社)がおすすめです。

実際に脚本を書こうとする場合、「シド・フィールドの三幕構成では枠が大きすぎてストーリーが作りにくい!」というケースがよくあります。その場合、こちらのブレイク・スナイダーの三幕構成が役に立ちます。

脚本家のブレイク・スナイダーが、シド・フィールドの三幕構成をベースにさらに発展させ、三幕構成を15のビートに分けています。

例えば第一幕については、下記のように6ビートに分けています。

【第一幕(状況設定)】
※以下、()内の数字は110分のドラマと想定した場合の時間(分)。
オープニング・イメージ(1)
 主人公の出発点を表すようなイメージシーン
 映画「ハリー・ポッターと賢者の石」でいうと、ダンブルドア校長が魔法で街に灯りをともすシーン。
テーマの提示(5) 
 登場人物の誰かが作品のテーマに関することを口にする
 映画「ハリー・ポッターと賢者の石」でいうと、赤ん坊のハリーを見たマクゴナガル先生が「この子は将来魔法界で誰よりも有名になる子ですよ」という。
セットアップ(1~10)
 主人公など登場人物の紹介。関係性や抱えている問題などがわかる
 映画「ハリー・ポッターと賢者の石」でいうと、孤児のハリーが、人間界の伯父の家で召使いのようにこき使われながら育っている状況が描かれる。
きっかけ(12)
 これまで当たり前だった世界が壊れるきっかけとなるようなできごとが起こる
 映画「ハリー・ポッターと賢者の石」では、ハリーのもとに、ホグワーツ魔法学校の入学許可証が届き、ハリーは自分が魔法使いであることを知るシーンに相当。
悩みのとき(12~25)
 主人公が、目標のために行動に出るかどうか決断をするまでの迷いのシーン。
 映画「ハリー・ポッターと賢者の石」では、ハリーは、出生の秘密や闇の帝王ヴォルデモートの存在を知るシーンに相当。
第一ターニングポイント(25)
 主人公が、目的に向かって動き出すポイント。第二幕へとつながっていく。
 映画「ハリー・ポッターと賢者の石」では、ホグワーツ急行に乗って、ハリーはホグワーツ魔法学院に向かうシーンに相当。

より細かな設定で構成を考えることができます。

「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」の内容についてはこちらの記事「ヒット作を書くためのバイブル!「Save the Catの法則」」も参考にしてください。

「物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術」(クリストファー・ボグラー&デイビッド・マッケナ著/株式会社KADOKAWA)

三幕構成を学ぶには「物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術」(クリストファー・ボグラー&デイビッド・マッケナ著/株式会社KADOKAWA)もおすすめです。

本書は、神話学者ジョーゼフ・キャンベルの「英雄の旅路(ヒーローズ・ジャーニー)」という理論をベースにした構成を学ぶことができるものです。

多くの神話や物語がこの「英雄の旅路(ヒーローズ・ジャーニー)」の構造でできていると考えられています。特に有名なところでは「スター・ウォーズ」「ロード・オブ・ザリング」「マトリックス」などが、この「英雄の旅路(ヒーローズ・ジャーニー)」に大きな影響を受けたといわれています。

本書ではこの「英雄の旅路(ヒーローズ・ジャーニー)」の流れをくんで、三幕構成への理解を深めることができます。

比較的やさしい文章で書かれているため、読みやすく、また、ストーリーをイメージしながら構成を学ぶことができます。

例えば第一幕については下記のように解説されています。

【第一幕(別離)】
日常生活
 ヒーローが日常の生活にいるところが描かれる。
冒険への誘い
 主人公に問題、挑戦、冒険が与えられる
冒険の拒否
 主人公は冒険の入り口で尻込みする。当初は乗り気ではない。
賢者との出会い
 主人公は賢者に出会い、勇気づけられる。
戸口の通過
 主人公は、初めて自分の意志で扉から出て、冒険へと向かっていく。

まとめ

三幕構成について紹介しましたがいかがでしたか。

より理解を深めるためには、おすすめの書籍を参考にしながら、実際の映画を見て分析することがおすすめです。

ぜひ、これらの情報を、あなたの創作活動に役立ててもらえると幸いです。

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