「脚本を書いてみたいけど、書き方のルールってどんな感じなの?」
台本を書かなきゃいけなくなった場合や、頭に思い描いたストーリーをシナリオにしてみたいといった場合、「脚本って一体どう書くの!?」と疑問に思うこともありますよね。
脚本の書き方には一定のルールがあり、舞台・ドラマ・映画においてほぼ共通です。また、日本でも海外でも脚本を書く基本ルールは同じです。
ここではそうしたシナリオの書き方の基本ルール・書式を紹介します。
なお、「書式やルールよりも、どうやったら物語を作ることができるのか、創作方法が知りたい」といった場合には、「3分で読破!「脚本・シナリオの書き方」(内容編)」を参照してください。
また、後半では「シナリオを独学するためのおすすめ本」についても紹介しています。書式やルールをマスターするためにも、ぜひ最後まで目を通してみてください。
脚本の書き方で押さえておくべきポイント
まず、脚本の書き方で押さえておくべきポイントは下記2点です。
- 脚本は、「表紙」「登場人物」「本文」で構成される
- 脚本の本文は「柱」「ト書き」「セリフ」で構成される
詳しく見てみましょう。
脚本は「表紙」「登場人物表」「本文」で構成される
脚本は、通常「表紙」「登場人物表」「本文」で構成されています。
通常は、表紙1枚、登場人物は1~2枚です。本文の枚数は上演時間によって変わります。
表紙について
表紙には、タイトルと作者名を書きます。表紙は通常1枚です。
基本的に必要なのは、タイトルと作者名だけ! 余計な絵や解説を入れると失笑を買うこともあるため、ご注意を……
登場人物表について
登場人物表には登場人物を記載します。
登場人物は主役、準主役、脇役の順に書き、年齢、職業などをあわせて書きます。通常は1~2枚のボリュームです。
登場人物表に書くポイントは次の4点です。
- 登場人物は、主役、準主役、脇役というように重要な順に書く
- キャラクター名の下には、年齢、職業を必ず書く
- キャラクター上、説明が必要な関係性(~の娘、~の親、~の上司など)も書く
- 端役(セリフが一言程度の端役)は、男1、男2、少女1、少女2と書いたり、役割が伝わりやすいように「清掃員」「受付」「店員」などと書いたりする
なお、セリフがまったくないエキストラについては、劇中に登場していても「登場人物表」に書く必要はありません。
本文について
本文では、物語・ストーリーを描写していきます。
かつては、原稿用紙400字に手書きで書くケースも多くありましたが、現在はWordなどでA4用紙に400字で印字するケースが大半です。
通常、400字1枚を1分と換算するため、上映時間に応じた枚数の目安は次の通りです。
- 10分のストーリー・ドラマ ……400字×10枚
- 60分のストーリー・ドラマ ……400字×60枚
- 90分のストーリー・ドラマ ……400字×90枚
テレビドラマのシナリオコンクールなどの「1時間ドラマ」の場合は、CMの尺を考えて、実質50~55分のドラマとなるため、400字×50~55枚といった募集が多くなっています。
本文の書き方の詳細は次で紹介します。
「本文」は「柱」「ト書き」「セリフ」で構成される
本文は「柱」「ト書き」「セリフ」で書く
本文は「柱」と「ト書き」と「セリフ」で構成されています。
「柱」「ト書き」「セリフ」のそれぞれの書き方は次の通りです。
柱の書き方
柱とは、シーンごとの撮影場所の指定です。「〇」印を書き、そのシーンの場所と時間帯を書きます。
〇渋谷高校・3年A組・中・朝
柱については次のポイントに注意して書きましょう。
柱を書くときは、書き始めに「〇」印を書く。
「〇」印には、撮影用台本にする際に、シーン番号が通しで入ります。
昼以外の時間帯については、「朝」「早朝」「夕」などの指定をする
柱には、照明の指示をする役割もあります。「昼」でないシーンの場合は、「朝」「早朝」「夕(夕方)」「夜」「深夜」といった指定を入れましょう。
【時間指定の例】
〇渋谷学校・運動場・早朝
〇渋谷学校・体育館・夕
場所について、建物の場合は中か外かも分かるように書く
柱は撮影場所の指示なので、誰が見ても同じ理解ができるように書きます。例えば場所の指定として「建物」を指定する場合は外か中か、分かるようにしっかり書きわけます。
【中か外か指定する例】
〇渋谷学校・体育館・中
〇渋谷学校・体育館・外
回想のシーンの場合は、「〇」印の後に(回想)と書く
回想シーンの場合は、柱の「〇」印の後に(回想)と書き、回想の終わりには「(回想終わり)」と書きます。そして、次の柱には「元の〜」と元の世界であることを明記します。
ト書きの書き方
柱でシーンを立てたら、「ト書き」と「セリフ」でシーンの内容を描写していきます。ト書きとは、登場人物の出入りや動きや、状況の説明をする文章のことです。
例えば次のように書きます。
【ト書きの例】
ト書きの書き方のポイントは次の通りです。
- 登場人物の出入りや動作を書く。登場人物の出入りや動作をト書きで説明します。
- その場の状況説明を書く。舞台のセッティングが必要となるため、セッティングに必要な情報を書きます。部屋を使う場合はどんな部屋か、店を舞台にする場合はどんな店かといった説明を書きます。
- ト書きは3行下げて書く。セリフと区別しやすいように、ト書きは全体的に3行下げて書きます。
また、ト書きには、時間経過の書き方やフラッシュバックの書き方など特殊な書き方もあります。
例えば、時間経過は、シーン内で時間を飛ばすときに使い、「× × ×」という記号で示します。
【時間経過の例】
「フラッシュバック」は、一瞬だけ昔のことを思い出す場合などに使います。舞台では使いませんが、映像ドラマで使います。回想ほど長いシーンではないため柱は特に立てません。フラッシュバックは、下記の使用例のように「× × ×」で「<フラッシュバック>」のシーンを囲んで表します。
【フラッシュバックの例】
ほかにもト書きの記号として次のようなものがあります。
FI(フェイドイン):音量がだんだん大きくなる
FO(フェイドアウト):音量がだんだん小さくなる
SE(サウンドエフェクト):効果音
これらは、オーディオドラマでない限りほとんど使いません。始めはこれらの記号を使わずに表現する方法を磨くようにしましょう。
セリフの書き方
セリフは、そのセリフを話す人の名前をまず書き、「 」でセリフを囲みます。
名前は、男性の場合は上の名前、女性の名前は下の名前で表記するのが一般的です。とはいえ、男性でも同じ苗字の人がいる場合は、下の名前で書きます。男性でも未成年や子供の名前は下の名前で書きます。
【セリフの例】
また、セリフの特殊な例としては、ナレーション、モノローグがあります。
ナレーションは、状況の説明や解説であり、モノローグは、登場人物の独白やつぶやきです。ナレーションはセリフの前に「N」と書き、モノローグはモノローグを語る人の名前の後に「M」と書きます。
【ナレーションの例】
【モノローグの例】
書き方の基本は以上の通りです。
脚本を独学するためのおすすめ本
脚本の書き方の基本を学ぶためのおすすめ本を紹介します。
月刊ドラマ
脚本を独学するためのおすすめ本の一つは「月刊ドラマ」です。
上の記事で、書式の基本がわかったところで、実際のドラマや映画の脚本を見てみることをおすすめします。実際の脚本を見ることで目指す形をイメージしやすくなり、書きやすくなります。また、実例を見た後だと、脚本技術の(少し難しく退屈な)本も、読みこなすのがさほど苦ではなくなります。
「月刊ドラマ」では、人気のテレビドラマの脚本が読むことができます。古沢良太さんや野木亜紀子さん、渡辺あやさんなど多くの人気脚本家のシナリオ作品がバックナンバーに掲載されています。
好きな作品を読み込んだり書き写したりすることで脚本の書き方がマスターできるため、おすすめです。
月刊シナリオ
「月刊シナリオ」も、実際に映像化された作品の脚本を読むことができるためおすすめです。
月刊シナリオ|映人社 (scenario-drama.jp)
月刊シナリオは、テレビドラマの脚本でなく映画脚本が多く掲載されています。
バックナンバーでは、アカデミー賞で話題となった「ドライブ・マイ・カー」のシナリオや、「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」などのスタジオジブリ作品も読むことができます。
映画好きな人はぜひお手本として読み込むことがおすすめです。
シナリオの基礎技術
シナリオ教本としておすすめなのは「シナリオ基礎技術」です。
とても分厚い本で、読みやすいとはいいにくいものの、シナリオの書き方の基本ルールのほか、小道具の使い方や説明セリフを使わないで展開させるコツなど、脚本を書く上でのテクニックが満載です。
脚本の書き方が身につくまで、辞書として一冊持っておいた方がよい本といえます。
まとめ
シナリオの教本を読むのもいいのですが、書式がわかったらさっさと書いてしまうのがよいでしょう。書きながら「こういう表現をしたい場合はどうすればいいか?」と教本に戻って調べたいことを調べて学んでいく方が効率的で、頭に入りやすくなります。
また、いきなり1時間ドラマ(賞味50分)を書くのは大変なので、例えば400字×10枚などの10分ドラマをたくさん書いてみるのがよいでしょう。
400字×10枚でも起承転結は必要になります。某シナリオスクールでは400字×10枚の10分シナリオを50作品書ければ、プロになれると伝授しているとか……?
いずれにせよ10分ドラマを書き慣れると、1~2時間ドラマといった長編が書きやすくなりますので、ぜひ試してみてください!