将来脚本家になりたいけど、大学はどこを選ぶべき?
どういう進路を選べばいいの?
将来、ドラマや映画の脚本家になりたい場合、どんな進路を選ぶべきか悩むこともありますよね。
結論からいうと、脚本家になるには大学はあまり関係ありません。高卒でも第一線で活躍するすぐれた脚本家はたくさんいます。
脚本家は学歴不問の職業と言えます。
上記は、トップレベルの脚本家といえるNHK大河ドラマを執筆した脚本家30人の学歴をまとめたものです。学歴の分布を見てわかるように、脚本家になった人の学歴は高卒から東大卒までさまざまです。
一見、早稲田大学と日本大学出身者が多いように思えますが、右図の「全国学生数ランキング」で分かるように、早稲田大学と日本大学はもともと学生数が多いため、出身者数も多くなっていると言えます。大学の学生数を考慮にいれると、脚本家の出身大学は特定の大学に集中しているとは言えません。
脚本家になるために大学は関係ないとなると、進路先選びに困ってしまいますよね。
脚本家になりたくて現在進路に迷っている場合には
◆すぐに脚本の学習を始めてみる
◆大学は、脚本の次に興味があることを学ぶ
ことをおすすめします。
本文では、
- 脚本家になりたい人がすぐにやるべきこと
- 将来を見据えた大学選びのコツ
を紹介するので、脚本家になりたいと思っている人は、ぜひ参考にしてください。
脚本家に学歴は関係ない
冒頭で触れた通り、脚本家になるためには、大学の進学先はほとんど関係ありません。
第一線で活躍する脚本家の学歴は高卒から東大卒までさまざまです。
先にも提示しましたが、超実力派で超売れっ子の脚本家といえる「NHK大河ドラマを執筆した脚本家」の学歴分布は下記の通りです。
NHK大河ドラマを執筆した脚本家には、下記のような人気作家が含まれています。
- 三谷幸喜さん(代表作「古畑任三郎」「王様のレストラン」「鎌倉殿の13人」など)
- 宮藤官九郎さん(「木更津キャッツアイ」「あまちゃん」「いだてん」など)
- 中園ミホさん「Doctor-X外科医大門未知子」「やまとなでしこ」「西郷どん」など)
- 橋田寿賀子さん(「おしん」「渡る世間は鬼ばかり」「春日局」など)
NHKの大河ドラマを任される脚本家は民放各社のドラマでヒット作を作成し続け、実力が認められた作家ばかりです。
これらの脚本家の学歴分布を人数の多い順にみると、大学を出ている人が大半ですが「高卒・高等専門学校卒」の人も6人と多くいます。
脚本家の場合、出身大学はほとんど関係ないと言えるでしょう。
ちなみに、学部については、文学部や教育学部などの文系が多い印象です。また、日本大学の場合は、芸術学部が多い傾向にあります。
脚本家に職歴も関係ない
脚本家には学歴だけでなく職歴も関係ないと言えます。
脚本家のデビュー前の職歴は、フリーの編集者や会社員、劇団所属者や飲食店勤務などさまざまです。
実際に活躍している脚本家についてデビュー直前までの職歴を見てみましょう。
「NHK大河ドラマ」を執筆した脚本家の脚本家デビュー直前の主な職業は下記の通りです。
脚本家のデビュー直前の職業の分布を見ると、
- フリーの編集者・記者・ライター‥‥4人
- 劇団主宰・所属‥‥4人
- 営業職などの会社員‥‥4人
が同率1位となっています。劇団主宰・所属者4人の中には、アルバイトなどの副業で生計を立てているケースもありました。
第4位の「撮影所勤務」というのは、かつて監督や脚本家といった専門職の採用をしていた松竹撮影所に勤務していた人のことです。今は残念ながら脚本家といった専門職の採用はありません。
脚本家志望者の場合、もともと書くことや映像関係の仕事が好きなせいか、ライターや劇団主宰、放送作家、AD、スクリプター(映画の撮影でシーンの記録を取る人)といった職業を選択する人が少なくありません。
また、一方で、会社員や飲食店勤務、プログラマー、占い師、歌手など、脚本とは関係のない職業に就いていた人も多くいます。
脚本家になるまでの職業については、実にさまざまなケースがあると言えます。
脚本家になるまでの「道のり」は?
脚本家に学歴や職歴が関係ないことは紹介した通りです。では一体、どのような進路を選べば脚本家になれるのでしょうか?
脚本家になるまでのプロセスを見てみましょう。
脚本家になるためには、まず脚本家としてデビューしなければなりません。デビューまでの一般的なプロセスは下記の通りです。
脚本家デビューをするプロセスとして多いのは、社会人としていったん就職をし、その後、脚本コンクールや自主映画などで実力を世に知られ、それをきっかけにテレビ局のプロデューサーから「脚本を書かない?」と依頼を受けて脚本デビューに至るパターンです。
多少の違いはあっても、脚本家デビューまでのプロセスには、下記2つの要素が必ず含まれます。
- 脚本を書く実力があることを世に示す
- テレビドラマのプロデューサーから執筆依頼を受ける
かつては、脚本家でも弟子入り制度のようなものがあり、プロの脚本家のもとで調べ物や書き物の手伝いをして修業を積み、折を見てプロデューサーに紹介してもらいデビューをするというプロセスもありましたが、今はこの弟子入り制度はほとんど見られません。
現在、上記の1と2のプロセスの2つを満たす具体的な行動は、次の4つです。
1.脚本コンクールの賞を受賞し、受賞をきっかけにプロデューサーに存在を認知され、脚本執筆の依頼を受ける
2.自主映画や舞台、映像作品などを制作し、プロデューサーに実力を認知され、脚本執筆の依頼を受ける
3.テレビ局・テレビや映画の制作会社に所属し、プロデューサーに実力を認知され、脚本執筆の依頼を受ける
4.芸能界やマスコミで活躍し、プロデューサーに実力を認知され、脚本執筆の依頼を受ける
実際のところ、特に1と2のパターン、なんらかのコンクールでの受賞したり自主制作の映画や舞台が評価されたりし、それをきっかけに脚本家デビューする人が多い傾向です。
また、テレビ局や映像制作会社に就職し、テレビ制作の仕事をしながら知り合ったプロデューサーに脚本を書かせてもらうよう直談判する方法もあります。その他、芸能界やマスコミで活躍して、プロデューサーから声をかけられるパターンもあります。
脚本家になるために今すぐできる3ステップ
脚本家になるためには、大学も就職先もあまり関係ないことを解説しました。
学歴や職歴が関係ないとなると、「じゃあ、脚本家になるためにどうすればいいんだ!」と困ってしまいますよね。
ここでは今からすぐに着手できる「脚本家になる方法」について紹介します。
それは次の3ステップです。
1.作品を作り始める
2.「面白い脚本」(自己判断でOK)が書けるまでひたすらトレーニングを積む
3.「面白い脚本」が書けたら公表する
以下で詳しく見てみましょう。
STEP1 作品を作り始める
脚本家になりたいのであれば、すぐにでも脚本を作り始めることをおすすめします。
脚本家になるためには、ほとんどの人が多くの習作を書くことになります。
あるシナリオスクールでは「『400字×20枚』のシナリオを50作書けば脚本家としての実力がつく」と言っていたり、ある有名脚本家は「段ボールひと箱分の脚本を書いてようやく脚本家デビューできる」と言っていたりします。真偽のほどはわかりませんが、デビューするまでにそれくらいのトレーニングを積む必要があるということはよく言われています。
脚本のフォーマットなどの書き方自体は、集中的にやると2週間程度、週1回の学習でも数カ月でマスターできるため、作品を作り始めましょう。
最初はストーリーやキャラクターを想像してメモするたけでもいい
最初は脚本の書き方など気にせず、「こういうストーリーにしたい」「こういうキャラクターにしたい」と想像を膨らまして文章やイラストにしておくだけでも構いません。
脚本の形式を学び、描きたいものを脚本として書き起こす
脚本の形式を学び、描きたいストーリーを脚本として書き起こしましょう。
脚本の形式は、本で独学したりスクールに通ったりして学ぶことができます。
本では下記のものがおすすめです。
月刊ドラマ:プロのシナリオ作品を読むことができます。お手本として読むことをおすすめします。
シナリオの基礎技術:シナリオの基本的な作法が学べます。こちらのページでも内容を紹介しています。
独学に自信がない場合、また独学後さらに技術を磨きたい場合は、スクールに通うことがおすすめです。
シナリオスクールは下記がおすすめです。
シナリオセンター
シナリオセンターは、東京と大阪に教室があり、通信教育でも学ぶことのできるシナリオスクールです。多くの有名脚本家が出身ライターとして活躍しています。脚本の知識を取得するとともに、実際に作品を書いて学ぶことができます。時折、テレビ局プロデューサーを招いてのイベント実施もあり、デビューのきっかけを掴むこともできます。コース終了後は、ライターズバンクに登録でき、シナリオの仕事を受注できる機会があります。
日本脚本家連盟スクール
日本脚本家連盟スクールは、脚本家の組合(著作権管理団体)である日本脚本家連盟が運営しているスクールで、第一線で活躍中のプロの脚本家から、脚本の書き方を学ぶことができます。脚本の知識を取得するとともに、実際に作品を書いて学ぶことができます。第一線で活躍中の脚本家が講師のため、業界事情を知ることが可能です。
スクールは、同じ志を持つ仲間もできることから、士気を下げることなく継続できるというメリットもあります。
STEP2 「面白い脚本/自信作」が仕上がるまで、ひたすら作り続ける
脚本を書き起こせるようになったら、他人に実力をアピールするための「自信作(面白い作品)」が書きあがるまで、ひたすら書き続けましょう。
書き続ける際の行程は、
書く ⇒ 第三者に見てもらって意見や感想をもらう ⇒ 修正する
の繰り返しです。
作り続ける際には、独善的にならないように、ときどき第三者に見せてフィードバックをもらい、修正を加えることが大切です。プロの作家でも第三者に見せて意見を求めることが多くあります。創作においては、意図がうまく伝わらないことが日常茶飯事だからです。
第三者の意見をすべて真に受けることはありませんが、うまく実力をアピールするためにも、多くの人に伝わりやすい表現に整えることが大切です。
脚本家の仕事はときに「修正するのが仕事」と言われるほど、修正を行う仕事です。修正の技術を鍛えるためにも、「書く⇒見てもらう⇒直す」の行程で作品を磨き上げていきましょう。
STEP3 「面白い脚本/自信作」が書けたら公表する
「面白い脚本/自信作」が書けたら公表しましょう。特にプロデューサーの目につくようにコンクールに出すことがおすすめです。
特におすすめのシナリオコンクールとしては、下記2つがあります。
どちらもテレビ局が主催する脚本コンクールです。大賞受賞作品はドラマ化されるため、すぐに脚本家デビューできます。大賞でなくとも、入賞すれば、賞金がもらえるほか、テレビ局内でのドラマの勉強会に参加でき、デビューのきっかけをつかむことも可能です。
シナリオコンクールの情報については「シナリオコンクール一覧|脚本家デビューに一番近い賞は?」を参照してください。
大学では脚本家とは別の収入源となるスキルを身に着ける
脚本家になるために有利な大学がないことはすでに解説した通りです。
それでも大学へ進学したり、就職したりすることは、脚本家になるために役立つことと言えます。
なぜなら、脚本家としてデビューするまでや、デビューしてから脚本家で食べていけるようになるためには、数年~十数年かかるケースも多く、その間は別の仕事をして生計を立てなければならないからです。
脚本家との下積みをしながら、他の副業などで生計を立てていく必要があるため、大学や就職先で稼ぐ力を身に着けておくことをおすすめします。
そのための大学・就職先選びのポイントは次の通りです。
将来的にフリーランスとして活動しやすいスキルが身につく学部・就職先を選ぶ
自分の生涯で強みとなる専門分野を選ぶ
テレビ・映像業界へ就職する
それぞれ詳しく見てみましょう。
将来的にフリーランスとして活動しやすいスキルが身につく学部・就職先を選ぶ
脚本家になることに備えて、将来的にフリーランスとして活動しやすいスキルが身につく学部を選ぶことがおすすめです。
例えば下記のような職業に就ける学部を選ぶとよいでしょう。
編集者・ライター、システムエンジニア・プログラマー、ブロガー、税理士・会計士、塾講師 ……
フリーランスの仕事をおすすめするのは、脚本家デビューをした後の下積み時代には、時間に融通の利かせやすい状態であることが大切なためです。脚本家の仕事と、会社員や公務員といった仕事とを兼業することは至難のワザです。
新人脚本家である下積み時代は、突然に脚本執筆の依頼が来るケースがほとんどです。「ドラマを執筆中の脚本家が煮詰まって書けなくなっているため手伝ってほしい」「撮影スケジュールが差し迫っていて脚本家の手が足りないから脚本チームに参加してほしい」という話が突然に舞い込んできます。
その際に「会社を休めない」という状況だと、仕事は他の新人脚本家の方に取られてしまいます。
実際のところ、新人脚本家として下積みを重ねている人は、フリーランスの仕事をしているか、比較的休みやすいアルバイトをしているか、時間の融通を利かせやすい仕事をしている人がほとんどです。
脚本家になるためには、フリーランスで働ける仕事を持っておくとよいでしょう。大学選びもそうした仕事につながる分野で学ぶことがおすすめです。
自分の生涯で強みとなる専門分野を選ぶ
作家としての個性を磨くためにも、自分の生涯で強みとなる専門分野を持っておくことをおすすめします。
とはいえ、将来的に医療ドラマを書きたいからといって、必ずしも医療関係の学部に進む必要はありません。
実際に脚本家が医療ドラマや弁護士ドラマを書く際には、その都度、脚本家が医師や弁護士に取材したり、リサーチャーや専門家がサポートについたりするケースがほとんどです。
しかし、もともと医療に興味があったり、法学に興味があったりして、大学で勉強していた場合はそれは強みになります。強みがある分、執筆のチャンスは他の人よりも多くなると言えるでしょう。また、脚本家として長く活動するためには、企画アイデアを出す能力も求められます。専門分野があると、ありきたりでない個性の際立った企画を出すことも可能となります。
個性を深める方法として、自分の興味・関心のあることを大学で極めておくことをおすすめします。
テレビ・映像業界へ就職する
テレビ・映像業界への就職は、ドラマ制作の関係者とのコネが作りやすいため、おすすめです。
上の「脚本家になるまでの「道のり」は?」でも説明しましたが、脚本家デビューのためには、テレビドラマを制作しているプロデューサーから脚本執筆の依頼を受けなければなりません。
そのため、テレビ局やテレビドラマの制作会社に就職していると、面識ができ、自分を売り込みやすいと言えます。(もちろん売り込むまでに脚本家としての力を磨いておくことが必須です)
テレビ局への就職、テレビドラマの制作局部門への就職を経て、脚本家になった人には、
- 井上由美子さん(「Good Luck!」「白い巨塔」「昼顔~〜平日午後3時の恋人たち〜」「緊急取調室」など)
- 大森美香さん(「カバチタレ!」「不機嫌なジーン」「あさが来た」「青天を衝け」など)
などがいます。
テレビ局・テレビドラマ制作会社への就職も狭き門で、難易度も高いと言えますが、挑戦する価値はあると言えるでしょう。テレビドラマの制作現場を知ることで、脚本と制作(監督・プロデューサー)を兼ねるライターとなれる可能性も高まりおすすめです。
まとめ
脚本家になるためには、大学や就職先は関係ないことを解説しました。
脚本家になりたい場合には、大学・就職先にかかわらず、すぐに脚本を書き始めることをおすすめします。
脚本家になるために有利な大学・就職先というのはありませんが、大学・就職先選びに迷う場合には、下記ポイントに注意して選ぶとよいでしょう。
将来的にフリーランスとして活動しやすいスキルが身につく学部・就職先を選ぶ
自分の生涯で強みとなる専門分野を選ぶ
テレビ・映像業界へ就職するとコネが作りやすい
脚本は、大学に行かなくてもシナリオスクールで短期間に学ぶことができるため、スクールを活用することもおすすめします。
また、テレビ局主催のシナリオコンクールの大賞を受賞すると、即、脚本家デビューにもつながるため、コンクールに挑戦することもおすすめです。
脚本家デビューを実現させるためにも、これらの情報をぜひ活用してください。