シナリオの書き方を学べる本は、たくさんありますが、「本当に売れる脚本」を書く方法が学べる本といえばコレ。「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」(ブレイク・スナイダー著)です。
シナリオの基本的な書き方を抑えたあとは、いかに売れる作品を書けるかが勝負です。そんな時に役立つ「脚本を面白くする秘訣」が書かれています。ヒット作を作るバイブルです。多くのプロデューサーや監督も読んでいます。
常にそばにおいて、自分の作品を見直すのに利用するのが一番ですが、必見ポイントを紹介します。
ヒット作の秘訣1:最高のログライン
売れる映画には、いいログラインがあるとのことです。
ログラインというのは「どんな映画?」というのを一行(ログライン)で表したもの。
いわばストーリーの核で、一行のログラインではっきりと説明できない作品は論外。
面白い映画というのは、このログラインそのものに力があるとのことです。
例えば…
警官が別居中の妻に会いに来るが、妻の勤める会社のビルがテロリストに乗っ取られる。
引用:「SAVE THE CAT の法則」
…「ダイ・ハード」(1988)
週末の楽しみに雇ったコールガールに、ビジネスマンは本気で恋をしてしまう。…「プリティ・ウーマン」(1990)
ログラインには、「皮肉(つかみ)」、「イメージの広がり(全体像が見える)」、「観客と製作費が想定できる」、「パンチあるタイトルとセットになっている」、という4要素を含ませるのがよいとか。
ヒット作の秘訣2:型破りの作品を作るには、型を知る
「どんな映画?」という問いに答えたあとは、「どんな映画に似ている?」を考えるのが大切とのこと。
書いている途中で道を見失っても、書いている作品がどのジャンルに属しているかが、わかれば、同じジャンルの作品からヒントをもらうことができる。
紹介されている10のジャンルは…
- 家の中のモンスター:限られた空間でモンスターに襲われるもの。「ジョーズ」「エイリアン」「パニックルーム」…
- 金の羊毛:主人公が何かを求めて旅をするもの。「スター・ウォーズ」「オズの魔法使い」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」…
- 魔法のランプ:とてつもない夢がかなうが、マイナスも抱え込むパターン。「ライアーライアー」「フォーチュン・クッキー」…
- 難題に直面した平凡な奴:どこにでもいそうなやつがとんでもないことに巻き込まれる。「ダイ・ハード」「タイタニック」「シンドラーのリスト」…
- 人生の節目:人生に忍び寄る危機を受け入れ、乗り越える。 「酒とバラの日々」「男が女を愛するとき」…
- バディとの友情:お互いを嫌っているが、旅するうちに相手の存在が必要とわかる。「レインマン」ほか、友情以外のラブストーリー全般も
- なぜやったのか?:犯罪が事件として明るみにでたときに、人間の邪悪さが暴かれる。「チャイナタウン」「JFK」「インサイダー」…
- バカの勝利:一見、まぬけや負け組に見える主人公が、勝利を収める。「フォレストガンプ/一期一会」、「ベイブ」、「アマデウス」…
- 組織のなかで:組織に誇りを感じる一方で、自分らしさが犠牲になる狂気を描く。「ゴッドファーザー」「アニマル・ハウス」…
- スーパーヒーロー:超人的能力を持つ主人公が、周りから理解されない環境に置かれる。「スーパーマン」「グラディエーター」「ゴッドファーザー」…
これらの型を踏まえたうえで、ひねりを加える。「同じ形で、違ったやつ」を作るのがポイント!
ヒット作の秘訣3;主人公は、ログラインをもっとも生かすものにする
主人公は、「どんな映画なの?」というログラインをよりよくするためにある、とか。
なので、想定している物語の中で、最大の葛藤ができる原始的な動機を持ち(勝ちたいとか生きたいとか恋人がほしいとか)、最大の変化をするのが主人公になるべく、イメージを膨らませていくこと。
ストーリーをうまく動かすのは出来事自体でなく、主人公が出来事から何を学ぶかだ。
引用:「SAVE THE CAT の法則」
本書には、ログラインを主人公に生かしたさまざまな事例があるので必見です。
ヒット作の秘訣4:大切なのは構成!
映画の構成は「三幕構成」という言葉で説明されることが多いです。
三幕構成とは、映画を3つの第一幕、第二幕、第三幕に分け、それぞれの幕の役割を、第一幕:設定 (Set-up)、第二幕:対立 (Confrontation)、第三幕:解決 (Resolution)としています。そしてこの3つの幕の時間比は大体、1:2:1と言われています。
この三幕をこの本では、著者のブレイクスナイダーが「三幕構成の考え方では幕と幕の間が広すぎてパニックになる!」と三幕をさらに詳細化、進化させた構成「ブレイク・スナイダー・ビートシート」を解説しています。イメージは次のような感じ。
【第一幕(状況設定)】
オープニング・イメージ(1)
テーマの提示(5)
セットアップ(1~10)
きっかけ(12)
悩みのとき(12~25)
第一ターニングポイント(25)【第二幕(葛藤)】
サブプロット(30)
お楽しみ(30~55)
ミッドポイント(55)
迫りくる悪い奴ら(55~75)
すべてを失って(75)
心の暗闇(75~85)
第二ターニングポイント(85)【第三幕(解決)】
引用:「SAVE THE CAT の法則」
フィナーレ(85~110)
ファイナルイメージ(110)
青字マーカー部分は、三幕構成の基本構成要素。( )内はページ数です。本書解説の洋画シナリオは110枚原稿が標準のようです。これだけ見てもわかりにくいのですが、例えば、オープニングイメージ(1)は、「これから観客がどんな映画を見るのか、作品のスタイル、ジャンル、テーマが明確に示されたものを最初の1分の第一印象で提示する」としています。また、テーマの提示(5)について、スナイダーは、「5ページ目に登場人物の誰かが問題提起をしたり、テーマに関係することを口走っている」と説明しています。
実際に、洋画を見ながら、このブレイク・スナイダー・ビートシートで分析をしていくと、わかりやすい人気作品ほどよく当てはまっていて、とても勉強になります😅
ヒット作の秘訣5:脚本を動かす黄金のルール
ここまでも十分勉強になる本ですが、後半の脚本を動かす黄金のルールという章に書かれている内容こそが、「SAVE THE CATの法則」の醍醐味。
面白くするための、秘策中の秘策。映画という旅を一緒に続けるには主人公に共感できることが重要な要素で、この共感要素をつくることを「危機一髪!猫を救え」ルールと言っています。
コソ泥という共感を持たれにくい主人公でも、猫を救うようないいところがあるなど、何か誰もが共感できるポイントを登場まもなく提示することが大切。
主人公に観客の気持ちが乗らないと面白いとは言えないので、これが大事な法則、黄金ルールになるようです。
まとめ
とにかく、読みやすいうえに、解説事例も豊富で実用的で面白く、役に立つ本です。あとは実行するのみ!😅
多くの人に楽しんでもらえるホンを書くのに必要な要素が満載なので、大ヒット作を書きたい人におすすめです。