脚本の書き方を学ぶためのおすすめ本ってある?
脚本の書き方を学ぶための書籍はたくさんあるため、実際に読むとなると「どれを読めばいいの!?」と疑問に思うことも少なくありませんよね。
ここでは脚本をマスターするために、最低限読んだ方がいいと思われる本を紹介します。
「最低限読んだ方がいい」という理由は、脚本を書く人であればおよそ常識的に知っている情報が書かれているからです。
脚本家になるためには読んでおいた方がよいといえるでしょう。
おすすめ本は、シナリオをこれから学びたい「初級者向け」とすでに脚本の書式などをすでにマスターしている「中級者向け」とに分けて紹介します。
おすすめするポイントは下記の通りです。
【初級者向け】
・脚本を書くための基本的なノウハウ(書式・技法)がわかる本
・見本となる脚本が読める本
【中級者向け】
・プロであればほとんどの人が知っている理論・考え方がマスターできる本
それでは具体的に見ていきましょう。
書式・技術を学びたい「初心者向け」のおすすめ本
「新版 シナリオの基礎技術」(新井一著/ダヴィッド社)
まず、脚本の基礎知識を学ぶためにおすすめなのは「新版 シナリオの基礎技術」(新井一著/ダヴィッド社)です。
書かれた時代は古いのですが、時代を問わず脚本を書く上で重要な情報が網羅されています。1冊保有しておいて損のない本です。脚本の書き方が体に染みつくまで繰り返し読み返して使える本です。
「新版 シナリオの基礎技術」を読むメリットは次のような点です。
・脚本の基本の書式をマスターすることができる
柱やト書き、人物表の書き方、FI/FOなどの記号の使い方など基本的な脚本の書き方が解説されています。
・起承転結にのっとった構成の作り方がわかる
起承転結にそって物語を面白く展開させるためのノウハウが紹介されています。
・リトマス法・小道具の使い方など脚本ならではの効果的な描写の技術がわかる
脚本は映像で見せる技法ですが、小道具の効果的な活かし方など映像ならではの描写方法を学ぶことができます。
1ページ2段組みになっており文字も多くて読むのも大変ですが、情報量が多く辞書並みの価値があるためおすすめです。
「新版 シナリオの基礎技術」について詳しきは、この記事「脚本の書き方を学ぶ一冊「シナリオの基礎技術」」も参考にしてください。
「月刊ドラマ」(映人社)
「月刊ドラマ」(映人社刊)もおすすめの書籍です。
脚本の力を伸ばすためには、教本を読むだけでなく、脚本の実物を見ることがおすすめです。「月刊ドラマ」は最近放送されたドラマの脚本が掲載されています。
好きなドラマの脚本が掲載されていれば特に興味を持って読むことができるでしょう。実際に放送されたドラマと脚本とを見比べてみるのも「この映像はこういう風に書けばいいのか」とわかり学習に役立ちます。
写経のように好きな作品を書き写して、展開のテンポや書き方を学ぶといった使い方をしている人もいます。
「月刊ドラマ」を読むメリットは次のような点です。
・実際のプロの脚本を読むことができる
・場合によっては好きな作家・好きな作品の脚本を見ることができる
・メジャーなシナリオコンクールの受賞作品を読むことができる
・脚本家のインタビュー記事などを読むことができる
・コンクールやドラマの企画書を書くためのお役立ち情報がわかる
月刊ドラマでは、月によって「シナリオコンクール対策」や「ドラマの企画書の書き方」など脚本を学ぶ人・駆け出しの脚本家に役立つ特集を組んでいます。実践的で役立つ情報が得られるというメリットもあります。
バックナンバーも販売されているため、気になる号のみを確認するとよいでしょう。
「月刊シナリオ」(日本シナリオ作家協会)
月刊ドラマともに「月刊シナリオ」(日本シナリオ作家協会刊)も脚本の見本としておすすめです。
月刊ドラマが主にテレビドラマの脚本を掲載しているのに対し、月刊ドラマは主に映画作品の脚本を掲載しています。話題になった映画・自分の好きな映画のシナリオを見ることができます。
「月刊シナリオ」を読むメリットは下記のような点です。
・話題になった映画・好きな映画のシナリオを見ることができる
・映画監督や映画脚本家のインタビューを読むことができる
・業界事情がわかる
月刊シナリオは「日本シナリオ作家協会」という脚本家の協同組合のひとつが発行しているため、巻末に「日本シナリオ作家協会通信」というものが付いています。通信では脚本業界のホットな話題が議論されているので、業界事情を垣間見ることもできます。
脚本の基本的な書き方はマスターしている「中級者向け」おすすめ本
中級者向けのおすすめ本は下記の3点です。
「SAVE THE CATの法則」(ブレイク・スナイダー著/フィルムアート社)
脚本の基本的な書き方をマスターして、「もっと面白い作品が書きたい!」「大ヒット作を書きたい!」という状態になったら、「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」(ブレイク・スナイダー著/フィルムアート社)がおすすめです。
初心者の場合、いきなり2時間ドラマを書くのは難しいため、急いで読む必要はないかもしれませんが面白く読みやすいので初心者でもすぐ読めます。
「SAVE THE CATの法則」を読むメリットは次の通りです。
・ハリウッド式脚本術がわかる
・ヒット作の共通事項がわかる
・ログラインや三幕構成を面白く作るコツがわかる
脚本家デビューしてプロデューサーと企画やストーリーを考える時に、この「SAVE THE CATの法則」の話になることがあります。プロデビューの前にぜひ読んでおくことがおすすめです。
「SAVE THE CATの法則」についてはこちらの記事「ヒット作を書くためのバイブル!「Save the Catの法則」」も参照してください。
「シド・フィールドの脚本術」(シド・フィールド著/フィルムアート社)
脚本家として高いクオリティの作品を作り続けるためには「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」(シド・フィールド著/フィルムアート社)は必読の本といえるでしょう。
ここに書かれている内容は、プロの脚本家なら大体マスターしていることと思います。
「シド・フィールドの脚本術」は3部作となっています。
第一作の「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」(シド・フィールド著/フィルムアート社)」が圧倒的に有名です。しかし、読みやすさと学びやすさはダントツに第二作目の「素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術」がおすすめです。
第一作目は大切なことが多く書かれているのですが「考える」ポイントがないため、身に着きにくいかもしれません。第二作目はワークブックとなっているため問題を解きながら学ぶことができ、短時間で理解を深めることができておすすめです。二作目を読んでから1作目に戻るのが楽に学習効果を高められるように思います。
第一作・第二作とをマスターしたら、さらに第三作目にチャレンジしてみるとよいでしょう。
第三作目は「最高の映画を書くためにあなたが解決しなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」です。
第三作目は、今自分がまさに直面している脚本の問題点をどのように改善していくかのポイントが集中的に説明されています。実践の場で役立つため、実際に作品を作り始めた人やプロの脚本家でも役立つ本です。
「シド・フィールドの脚本術」を読むメリットは下記の点です。
・世界的に支持されているハリウッド式脚本術がわかる
・三幕構成の実践的な利用方法がわかる
・脚本作りで直面するさまざまな課題に対する解決策が見いだせる
シド・フィールドの脚本術についてはこちらの記事「シド・フィールドの脚本術とは?著書「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」」も参照してください。
「「感情」から書く脚本術」(カール・イグレシアス著/フィルムアート社刊)
脚本を書きなれてきた中級者には「「感情」から書く脚本術」(カール・イグレシアス著/フィルムアート社刊)もおすすめです。
「SAVE THE CATの法則」や「シド・フィールドの脚本術」でログラインや三幕構成、プロットについて学んだあとに、つい陥りがちなのが「それでも面白くならない!」といったパターンです。ルールを守ってシステマティックに物語を作ろうとして、肝心の「何か」を忘れている状態といえます。
そういうときおすすめなのが「「感情」から書く脚本術」です。この本はUCLAで人気の課外脚本執筆講座の講義内容を本にしたものです。
「ログライン・三幕構成といったものは、洋服を作るうえでの裁断方法や縫製方法であって、それを知っているからといって人に個性的でオシャレな服を作れるわけではない。個性的で面白い作品を作るには「感情」を掴むことが大切だ」という考えに立って書かれたものです。
本文中に
素晴らしい脚本の書き方を身に着けたいのなら、素晴らしい脚本を読む。そこから学ぶ。そして分析する。これだけは100回言っても足りない。
「「感情」から書く脚本術」(カール・イグレシアス著/フィルムアート社刊)
とある通り、これは素晴らしい脚本から学び・分析されたアプローチ方法の一つです。ログラインや三幕構成といった技術も同じく素晴らしい脚本を分析するアプローチ方法の一つですが、この本では「見る人の感情をどう掴むか」といった視点からアプローチしています。
「「感情」から書く脚本術」を読むメリットは次の通りです。
・脚本だけでなく小説や創作全般に使える感情をかき立てる技巧を学べる
・キャラクターやシーン、セリフに加えるべき具体的なポイントがわかる
「「感情」から書く脚本術」は脚本だけでなく小説やゲームシナリオなど創作全般において応用できる方法のため、創作を志す人は一読して損はないといえるでしょう。
番外編
最後に、初心者・中級者問わずおすすめといえる本を紹介します。
「脚本を書くための101の習慣」(カール・イグレシアス著/フィルムアート社)
「脚本を書くための101の習慣」(カール・イグレシアス著/フィルムアート社)は、脚本の書き方を学ぶ本ではなく「脚本家としての心得」「脚本に対する取り組み方」を学ぶ本といえます。
ハリウッドの第一線で活躍している22人の脚本家が、下記のような点について、見解を寄せています。
・最高の作品を書くために必要なこと
・創造性を維持するために必要なこと
・脚本家として書き続けるための心得
・脚本家に必要な四訓(根気、忍耐、情熱、鍛錬)をどう維持するか
「脚本を書くための101の習慣」を読むことで次のようなメリットが得られます。
・ハリウッドで活躍している脚本家の生態や考えていることがわかる
・脚本家として第一線で活躍するために必要なことが伺い知れる
・素晴らしい脚本を書くために何をしなければならないか想像することができる
読み物としても面白く読めるものなので、脚本の学習の息抜きにも最適です。売れっ子脚本家の生態がわかるので、脚本家になるためのイメージトレーニングとしても使えるかもしれません。
まとめ
脚本の書き方を学ぶために最低限読むべき本について紹介しました。
これらの本は脚本家デビューするまでに読めば、デビューできるだけの技術を身に着けるために役立ちますし、プロになってから読んでも、さらに技術を磨いて良い作品を書くために役立つ本といえます。
ぜひこれらの情報を参考に脚本を書く技術を磨くために活用してください。