「ログラインって何?」
「ログラインって具体的にどう書くの?」
脚本の勉強をしていると「ログライン」という言葉をよく耳にしますよね。
ログラインとは、その映画がどんな話か、映画の見どころや要点を1~3行程度で表したもののことです。
ハリウッド映画界では、「ログライン」は、映画(脚本)を売り込むための第一声となるもので、特に重要視されている要素です。
日本の映画やドラマの製作現場でも、これから作るストーリーを検討する際には「それって簡単にいうと、どんな話?」とログラインについて話す機会が少なくありません。
自分の脚本をアピールする際にも、ログラインは重要なため、ログラインをどう書くべきか、ぜひ把握しておくようにしましょう。
この記事では
・ログラインとは
・名作映画のログライン一覧
・ログラインの書き方
を紹介します。
それでは詳しく見ていきましょう。
ログラインとは「どんな話?」を1~3行で示したもの
ログラインとは、映画や脚本などについて、それがどんな話かを1~3行で表したものです。「それってどんな話?」と質問されたときに答えるような、作品の見どころと要点のことをいいます。
例)鬼滅の刃:鬼に家族を殺された主人公が、鬼になった妹を人間に戻すため鬼に戦いを挑む話
ログラインは、だらだらと冗長に表現するのでなく、ずばりと核心を過不足なく伝えることがポイントです。
ログラインは「見たい!」「読みたい!」「作りたい!」と思わせる引きが必要
ログラインは、その作品の肝となる部分です。
この作品の肝となるログラインを他人に聞かせただけで、
「その映画、見てみたい!」
「その脚本、読んでみたい!」
「その脚本、映像化してみたい!」
と思ってもらうことが大切です。
「一言で作品の面白さなんて伝わるわけがない!」といいたくなるところですが、名作映画・ヒット作品は、このシンプルなログラインでも十分に面白い要素が入っているといわれています。
例えば、「今度はどんな映画を見ようかな」と迷った場合、「どういう話か」を確認して、見る映画を選びますよね。この「どういう話か」を確認するときに「面白そう」と思えなければ、いくらいい作品であっても見てもらうことはできません。
ヒット作・名作は、ログラインだけでも十分に「面白い!」と思ってもらえる要素を含めることが大切です。
ログラインに含まれる要素
ログラインは「どんな主人公が何をする話か」を表すもので、大体下記の要素が含まれます。
・主人公は誰か
・主人公の目的は何か
・どういう主人公か
・主人公の目的に対する傷害はなにか
ただし、これらの要素をただ含むだけでは、面白味に欠けるため、下記の点を意識して書くようにしましょう
・新鮮味を出す
・皮肉を込める
面白い!と思ってもらうためには、今まで見たことのないキャラクター設定や舞台設定などにするなど新鮮味を持たせたり、「本当にそんなことできるの!?」と思わせるような皮肉を込めることがポイントです。
特に、脚本の教本などでは、”ログラインには「皮肉」があることが大切”といわれるため、「皮肉」については次に詳しく解説します。
売れる作品のログラインに必要なのは皮肉(つかみ)
売れる作品のログラインには面白みがあり、その面白みとは「皮肉があること」といわれています。(参考:ブレイク・スナイダー著「SAVE THE CATの法則」)
皮肉とは、「……よりによってどうしてそんなことが起きるの!?」といった「弱点をつくような意地悪なできごと」や「思惑とは逆の展開」といった意味です。
ログラインでいえば、例えば下記のような展開が考えられるでしょう。
・一人で留守番する羽目になった少年のもとに、2人組の泥棒がやってきて、少年は泥棒と戦うことになる。(映画「ホーム・アローン」)
・低賃金で働くシングルマザーが、巨大企業の環境汚染の実態を暴いて訴訟を起こし巨額の和解金を勝ち取る話。(映画「エリンブロコビッチ」)
この場合の皮肉とは「少年がたった一人で留守番をしているときに、よりによって泥棒が入るなんて!」とか、「社会的に弱いと思われる低賃金のシングルマザーが大企業の巨悪をやっつけるなんて!」といったものになります。
ログラインに皮肉を込めるとは、つまり
・ゴールを達成するイメージとは真逆のキャラクターが、ゴールを達成する
・主人公が、普通であればおおよそ達成できないような目標を達成する
といった設定を入れることといえるでしょう。
皮肉があったほうがゴールの達成が難しく、それだけストーリーも盛り上がることが想像できますよね?
皮肉は「つかみ」ともいえます。皮肉があることで「よりによってそんな状況で問題は解決できるの?」と見る人をやきもきさせ、興味を惹くことができます。
名作映画のログライン一覧
次に、実際の名作映画のログラインを見ていきましょう。
鬼滅の刃
鬼に家族を殺された主人公が、鬼になった妹を人間に戻すため鬼に戦いを挑む話
ハリー・ポッターシリーズ
両親を悪い魔法使いに殺された少年が、魔法学校へ進学し、悪い魔法使いが魔法界を支配しようとするのを防ぐ話
タイタニック
豪華船タイタニック号にたまたま乗り込んだ貧乏な青年が、孤独な貴族の女性と出会って恋に落ちるが、二人を乗せたタイタニック号は氷山に衝突して沈没していく
アバター
車椅子の元兵士が、惑星パンドラでアバターとしてミッションを実行する。しかし、パンドラの住民の命を脅かすミッションに疑問を抱き、パンドラを守るために反旗を翻す
スパイダーマン
両親を早く亡くしたオタクな高校生が、新種の蜘蛛に刺されたことで特殊な能力が備わり、巨悪と戦うことになる
バック・トゥ・ザ・フューチャー
事故で過去にタイムスリップした青年が、将来自分の母親となる女性に恋をされてしまい、母と父をくっつけるために奔走する
プリティ・ウーマン
冷徹な実業家が、6日間の契約で雇った売春婦と恋に落ちる
エリン・ブロコビッチ
無職のシングルマザーが、巨大企業の環境汚染の実態を暴き、訴え、全米史上最高額の賠償金を勝ち取る
ショーシャンクの空に
冤罪で刑務所送りとなった元銀行員の男が、才覚を生かして過酷な状況を生き延び20年の歳月を経て、脱獄に成功し自由を勝ち取る
ローマの休日
スクープを取りたいジャーナリストの男が、城を抜け出した王女と偶然出会い、スクープを書くつもりで彼女を連れ回すが恋に落ちてしまう
いかがでしょうか?
実際には、映画を一言でまとめようとすると何通りかのまとめ方があります。
例えばハリーポッターなどでは、「ハリーやハーマイオニー、ロンとの友情が育まれていくストーリー」「孤独な魔法使いの少年ハリーの成長物語」ともいえます。しかし、ログラインにする際には、皮肉を込めて「誰がどういうゴールを目指して突き進む話か」に焦点をあててまとめるようにしましょう。
ログラインの書き方
ログラインが何か分かったところで、実際に書いてみましょう。
脚本を書く前にログラインを作ることで、作品の売りや作品の軸をしっかりと把握することができます。
「どういう主人公が何をする話か」をつかみを入れて書くのが基本
ログラインには、先にも解説した通り、「どういう主人公が何をする話か」について、皮肉・つかみを入れて書くのが基本です。
ログラインを作成する際は、下記の点を含めるように作成しましょう。
・主人公の設定(どういう主人公か)
・主人公の目標・ゴール
・主人公の目標達成についてどういう障害があるか
ログラインに皮肉を利かせる3つのコツ
ログラインに皮肉を利かせるためには、下記点に注意するとよいでしょう。
・ゴールを達成しにくい障害を設定する
・ゴールを達成するイメージと真逆の主人公の設定にする
・設定を大げさにしてみる
皮肉を利かせるためには「そんなことできるの?」と思わせるようなハードルの高い目標や難題を主人公に課すことがポイントといえます。
うまくなるには多くの名作映画から学びひたすら書く
ログラインは実際に自分が「面白い」と思う映画のログラインを分析してみることで、そのストーリーの核や惹きとなる魅力を深く学ぶことができます。
なお、ログラインが秀逸でも、そこから物語を紡ぎあげる技術がないと面白い作仕上げることができません。名作映画のログラインと完成品を見比べながら、ログラインから脚本への膨らまし方も学ぶようにしましょう。
ログラインから作品への膨らまし方は「3分で読破!「脚本・シナリオの書き方」(内容・創作編)」の記事も参考にしてください。
名作を生むためにも、名作映画を見てログラインを学びながら、実際にどんどん書いていくことがおすすめです。