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映画分析 英語でシナリオ

映画「スポットライト」脚本分析(4)クライマックス前の大ピンチの見せ方

前回映画「スポットライト 世紀のスクープ」の第二幕についての解説の続きです。

第二幕の後半は、第三幕のクライマックスに向けての大ピンチが描かれます。「スポットライト」は実話ベースの物語で、「大ピンチ!」の設定には全世界の誰もが知るあの事件が関わっています。リアルで面白い展開です。それでは以下に見ていきましょう。

第二幕(中盤)「葛藤」の展開(続き)

第二幕の続きです。

第一幕はセットアップ(登場人物や舞台などの状況設定、テーマの提示)、第二幕は第一幕で提示されたテーマに沿って戦い葛藤する展開の場面ですが、通常、この第二幕には、Midpointという大きな転換点があります。

それが前回の最後に書いた「これはもはや、個々の神父の問題ではない。組織の問題だ」とマーティ局長が言うシーンです。

ゲーガン神父という一人の性的虐待をする神父を、教会のロー枢機卿が隠していたというだけの事件でなく、虐待神父はボストンだけで90人近くもいて、それを組織的に隠していることがだんだんわかってきたのです。

で、Midpointを迎えた後、記者たちは、性的虐待の加害者と思われる87人の神父のウラを取りに行きます。
多くの被害者に取材をします。
時には、被害者から「ほっといてくれ!」と邪険に扱われもします。
地道な取材が続きます。

そんな折、事態が急展開する事実を、マイクはガラベディアンから聞き出します。

このシーン、何度聞いても聞き取れない…
日本語でもなかなか理解できない専門的な話…

教会の弁護士のロジャースとの攻防戦の裁判を終えて、ランチを食べているガラベディアンに、裁判を見学していたマイクが声を掛けます。

シーン109
EXT. HAMPDEN SUPERIOR COURT, SPRINGFIELD, MA
Garabedian sits on the courthouse steps, eating a packed
lunch out of tupperware. Simmering.
マサチューセッツ州スプリングフィールド、ハンプデン上位裁判所
ガラベディアンは裁判所の階段に座って、タッパーウェアのランチパックを食べています。

MIKE
How you doing, Mitch?
ミッチ、元気?

Mike walks up, sits down.
マイクが歩いてきて座る。

GARABEDIAN
I’m fine.
ああ


MIKE
(pushing him)
He’s tough, that Wilson Rogers.
ロジャースはやり手だな。


GARABEDIAN
He’s smug. And he’s sloppy.
間抜けなインチキ弁護士だ


MIKE
He doesn’t seem sloppy.
優秀そうだが?


GARABEDIAN
You don’t know the half of it. Trust me.
君は半分しか知らない。

引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」および映画「スポットライト」字幕から

【単語】simmer:煮る、smug:ひとりよがりの、自己満足している、独善的な、sloppy:薄くて水っぽい、だらしのない、いい加減な、感傷的な
(※シナリオ訳には、意訳のわかりやすい字幕を引用しています。以下同じ)

……で、ここから少し専門的なややこしさのある会話になるので、そこを省略、要約すると……

ガラベディアン弁護士曰く、ゲーガン神父の35年前の虐待事件のことを知っている元神父が3年前にガラベディアンに電話をしてきた。
それで、その時、ガラベディアンが元神父から供述書を取ろうとすると教会側の弁護士のロジャースがついてきて、うまくいかなかった。

それが、昨年、田舎の新聞に”ゲーガン事件は幹部の責任」という元神父の小さな記事が出た。
ガラベディアンは、これは証拠になると、再び、元神父から供述をとるために訴訟を起こした。

すると、それを潰すために、ロジャースが出しゃばり、ガラベディアンの訴訟に対して訴訟を起こしたのだが、これがチャンスになるというのだ。
ガラベディアンは、供述の根拠を提出するために、文書を提出することになるのだが、それは、まさに今、教会によって封印されているのと同じ文書だというのだ。

そしてそのシーン109の続き…

MIKE
You're shitting me.
嘘だろ?


GARABEDIAN
No, I am not shitting you. So I pull out the 14 most damning docs
and I attach them to my motion. And they prove everything.
About the Church, about the bishops,about Law…
まさか。本当だ。私は14件の(相手に破滅的な)文書を証拠として提出した。
それですべて証明できる。教会も、幹部(司教)も枢機卿も。


MIKE
And it’s all public? Because your motion to oppose Rogers'motion…
すべて公に? 君とロジャースの訴訟の証拠だから?


GARABEDIAN
…is public. That’s correct. Now you’re paying attention.
そうだ。わかったかね。


MIKE
(head spinning)
So I can just walk into the courthouse right now and get those documents?
裁判所の記録保管所に行くだけ?(でそれらの書類が手に入ると?)


GARABEDIAN
No. You cannot. Because the documents are not there.
いや、記録保管所にはない。(から手に入れることはできない)

MIKE
But you just said they’re public.
でも今、公と?(言ったよね?)


GARABEDIAN
I know I did. But this is Boston.
And the Church doesn’t want them to be found. So they are not there.
確かにそういった。でもここはボストンだ。教会は誰にも見せたくない。だからそこにはない。

MIKE
Mitch, are you telling me that the Catholic Church had legal documents

removed from the courthouse?
カトリック教会は、裁判の証拠を隠せると?

Mitch collects his things, turns to Mike. With clarity.

ミッチ(ガラベディアン)は、ランチを片付け、マイクの方を向いてはっきりと


GARABEDIAN
Look, I’m not crazy, I’m not paranoid, I’m experienced. Check the docket, you’ll see.
They control everything. Everything.
妄想で言ってるんじゃない。記録保管所へ行ってみろ。教会は何でもできる。

引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」および映画「スポットライト」字幕から

【単語】damning 罪を免れない、破滅的な、motion 命令申請、clarity 明快さ、courthouse 裁判所、
paranoid 偏執症(患者)の、誇大妄想的な

マイクは、「まさか?」と思って裁判所の記録保管所で、ガラベディアンの訴訟資料を請求しますが、渡されたファイルの中は、空っぽ。
公になっているはずの裁判の証拠資料が、本当に見られないようになっているのです。

ガラベディアンの「教会は何でもできる」という言葉は本当でした。

戸惑うマイクに、グローブ社の弁護士のアルバノが「裁判所に文書を再提出させるようにしろ」とマイクにアドバイス。
ということで、マイクはすぐに手配し、あとは、待つのみ……
のはずが、ここで別の大事件に邪魔されます。

アメリカ同時多発テロが起きる

2001年9月11日、アメリカ同時多発テロが起きます。
スポットライトチームももれなく、取材に駆り立てられます。
それになにより、この大惨事の中、教会の存在が、悲しみを抱える人々の、心のよりどころとなるのです。教会を糾弾するには時期が悪すぎます。

教会の不祥事の取材が先送りされ、無念の思いのスポットライトチームのメンバー。

そんな中、ガラベディアンが、例の証拠書類を裁判所に再提出したと聞き、マイクは記録保管所にすっ飛んでいきます。が、相変わらず記録所は資料を出してくれません。
マイクは、判事に直談判することにします。
判事はマイクの話に応じるも、「これは機密性の高い書類だね」と渋る。
「公になっている書類です」とマイクは食い下がるが…

シーン136後半

JUDGE VOLTERRA(ヴォロテッラ判事)
Maybe so, but tell me, where is the editorial responsibility

in publishing records of this nature?
確かにそうだが。この文書を記事にした場合、責任は誰がとる?


MIKE

Where’s the editorial responsibility in not publishing them?
では、記事にしなかった場合の責任は?

引用:スクリプト「SPOTLIGHT Written by Josh Singer & Tom McCarthy」および映画「スポットライト」字幕から

そして、とうとう証拠を手に入れたマイク。
証拠書類とは、被害者の母親がロー枢機卿に宛てた手紙で、その内容からロー枢機卿が昔からゲーガン神父の性的虐待を知っていたことのわかる内容だった。

「大スキャンダルだ、すぐに報道しよう」と息巻くマイク。
だが、スポットライトチームのデスクのロビーが「まだだ。我々の狙いは教会だ」と止める。
全体像がつかめるまで、マーティ局長やベン編集長にもまだ報告しないし、まだ報道できない、とロビー。
「今も子供たちが狙われてるんだぞ!」と切れるマイク。
サーシャもマットもマイクの気持ちはわかるが、仕組みを暴かないと解決にはならない。

そして、いよいよラスト、第三幕……!

(続く)

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